クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~

それから父は笑わなくなった。

私を見ると悲しげな顔をして、『お前だけは母さんのようにはさせない』と言った。

どうしてお母さんのようになってはいけないのか私は怪訝に思ったけれど、父があまりにも悲しそうな顔をしてそう言うものだから、幼いながらも問うことはできなかった。

そして思った。

父をこれ以上悲しませないように、父の言う通りに生きなければならない、と。

そうすれば、父はまた私に笑ってくれる―――と。

それから父の思うままに生きてきた。

決められた学校に通い、決められた習い事を身に付け、友達も父が認めた子だけを選んだ。
父の望む通りの女性になり父が求める理想の女性になるべく生きてきた。

けれども、父は笑ってくれなかった。