クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~

「妻への恨みと愛とのジレンマをうまく消化できない葛藤を、私は残された娘に愛情を注ぐことで解消しようとした。娘をけして妻のような女にはしないと誓った。優れた教養を持ち、楚々として貞淑な女性に育てれば、娘だけは幸せになれると思った」
「…それが…芽衣子さんにとって本当の幸せだと…?」
「いいや…」

岸議員は自嘲した。まるで今にも泣き出しそうな、弱々しい微笑だった。

「それは愛情という皮を被った私の独善だった。最初から解かっていたよ。私は芽衣子に妻の代わりを求めていたのだと」
「……」
「私が理想とする女性に育てれば、娘はけして妻のように私に恥をかかせないと…傷つけないと…私を一人にしないと…思うことで、自分を慰めていた」
「……」
「そんな私の身勝手な考えなどつゆ知らず、芽衣子は私が理想とする女性になろうと努力し続けた。…なんでも言うことをきく、良い娘だった。いったいどれだけ自分を殺し続けてきたのだろうな…」

クラブで再会した時の、芽衣子の思いつめた顔を思い出して、俺はやり場のない怒りに唇を噛みしめた。

「…芽衣子さんは言っていましたよ。『父の理想通りの女性になれば、いつか父は私に笑ってくれると思っていた』と…」