クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~

恐怖に圧し潰されそうになりながらも、私は精一杯気を張って北村を睨み上げる。

もう前回のようにいいようにはさせない。
私には雅己さんとお母様がいる。そしてこれから、父と話をしなければならないのだ。

北村のような卑劣な部外者に、邪魔されるわけにはいかない。

手を振り払おうと必死になる私を北村は不気味な無表情で見下ろしていたが、その虚ろげな目には、所有物の生意気な反抗に不快感を滲ませたような、冷ややかな光が宿っていた。

「君は、僕との結婚をまだ拒むつもりなの?」
「……っ」

手首の力が強まり私は思わず声を漏らした。
怒り任せの凄い力だった。
怖くて、泣きそうになる。でも、屈したくない。

「そのつもりよ。あなたなんかと結婚する気など、毛頭ありません」
「ふぅん…あの御曹司風情を選ぶと」
「そうです。もとよりあなたとの結婚は親同士で決めたこと。私にあなたへの関心など微塵もありませんでした」
「なんて、下劣な女だ」

汚いものでも目にするかのように、北村は吐き捨てた。

「なるほど、あの母親の血が流れているわけだ」

え…?

母親?

私の、お母様のこと…?

なぜこの男は、そんな蔑むように母のことを言うの?

困惑する私を嘲笑いながら、北村は続けた。

「おまえはずっと、『母と死別した』と信じてきたらしいな。…まったく、おめでたい馬鹿女だ」
「…どういう…こと?」

不安がじわじわと胸に沸き起こってくる。
これまでの頑な態度を一気に綻ばせていく私を面白がるように、北村が軽薄な笑みを浮かべた。

「死んだなんて嘘だ。おまえの母親は今もどこかで生きている。逃げた不倫相手と一緒にな」