クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~

私は思わず店長を見やった。
目で訴える。それだけは勘弁してください…!

「いいかな?」

専務が店長を見据えて繰り返す。
伺う言葉にもかかわらず、その声には有無を言わせない圧力があった。

「は…はい…」と店長は反射的に応じ、申し訳なさそうに私を一瞥するとその場を去っていった。

店長がいたところで問題はないはずなのに…不安が押し寄せる。
そして鈍い確信も感じつつあった。
似ていない全然。
でもやっぱりこの人は―――。

「我が社のカフェ事業は日本文化や風情を楽しむ、ということをコンセプトにしています。お客様にはカフェにいながらも茶会の場に身を置いた時のような安らぎ、充実感を得てほしい。そのためには従業員一人一人の深い教養や心配りといった能力が求められますが、店舗が拡大するにつれそれを保つのも難しくなってきていました」

穏やかな口調で続けられる専務の話を、私は気もそぞろに聞いていた。