クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~

「雅己さん…! まだお話が途中で」
「もう時間がないよ」
「今日の公演はお兄さんのお弟子の初公演でもあるの。だからお祝いの言葉も言付けたくて…まだ一、二分くらい…」
「だめ」

言い切る俺にさすがの芽衣子も少しむっとしたのか、

「もう、雅己さんはちょっと強引よ…!」

珍しく棘のある声で言ってきた。

「親しい間柄とはいえ、私のお友達なんですから、あまり無神経なことはしないでっ」

無神経?

ブチッ―――と今の俺の脳内の状態を表現するなら、こんな効果音を使うのがぴったりだろう。

「無神経ね…」

俺は立ち止まり、芽衣子と向かい合った。