クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~

「な…」

いつの間にか、芽衣子が他の男と談笑していた。

相手は見たことがあった。
舞台はもちろんテレビにもよく出演している超有名若手歌舞伎俳優。
女関係の噂も絶えない、色男だった。

そんな男と芽衣子がさも親しげに談笑していた。
和装同士、またその楽しげな様子が風情よく絵になっているのも気に障る。
さらに、その様子が物見高い周囲の人間に注目されているのも余計に腹が立つ。

あろうことか、歌舞伎俳優は今にも抱き寄せんばかりに芽衣子の肩に手を乗せた。
俺は思わず早足で二人に近付くと、

「芽衣子、その方は?」

俳優の手から引きはがすように、芽衣子の片方の肩を掴んだ。

突然のことにびっくりする芽衣子だったが、すぐに俺に微笑むと、

「えっと、こちらは歌舞伎俳優の―――」

と名を言うが―――それは知ってるよ芽衣子。俺が知りたいのはそいつと君の関係だ…!