おっとこれは。

その唇は軽く突き上がり、ふくれた頬は微かに赤い。

そうだ、今の芽衣子は少しほろ酔いだった。

どうやら、芽衣子は酔うと少し気が強くなるようだ。

「すまない、次から次へと」
「いいえ、お食事の約束をしていたのなら、しょうがないわ」
「あれは…芽衣子と出会う前のことだよ?」
「だからと言ってあんな断り方したら失礼だわ」

と、機嫌が悪い芽衣子。

そう言うけれど、応じたら応じたでもっと機嫌が悪くなるくせに―――と、俺はむしろ愉快になってきた。

こんな芽衣子を見るのは初めてだった。
こんなにあからさまに嫉妬してきて―――逆に俺を喜ばしていることに、彼女は気付いているのだろうか。
二人きりだったら、今すぐ抱き寄せて、その愛らしく尖った唇にキスするのに…。

「ごめんね、芽衣子。どうしたら許してくれる?」
「知りません」

楽しげに詫びる俺からぷいと顔を背けて、芽衣子はすたすたと歩いて行ってしまう。
あとを追いかけようとした、その時だった。

「おお、波多野君じゃないか!」