クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~

「どれがいい?」
「そうね…じゃあこれで」

けれども芽衣子はすぐに選んでしまう。案の定、一番安価なものをだ。
一目見て価値を予測できてしまうその目利きの良さには相変わらず感心させられるが、遠慮なんかしてほしくはない。

「それもいいけれど、俺はこれか、これだな」

と選んだのは、絹を使った銀地に金糸の刺繍が入った涼しげなもので、黄色地の着物に合わせるととても優美で品のいい印象になる。

対してもうひとつ選んだのは、同じ絹地に今度は黄色とは対象色の薄藍色のもので、薄紫の桔梗の文様と相まって全体的に引き締まった粋な印象になる。

どちらもの甲乙つけがたい。
つまり、芽衣子の好み次第と言うことだ。

「…どちらもすごく素敵だけれど、とても高価なものだわ…」
「君に相応しいものと思ったらこの二本になったんだよ。俺はこれを締めた君の着物姿が見たいだけ。俺の希望を叶えると思って、選んでくれないかな」

頬を赤らめた芽衣子は睫毛を一瞬ふせると、すぐに俺を見て微笑んだ。
それから真剣な表情になって、小さな顎に指を添えて考え込む。

しばらくして選んだのは、薄藍色の方だった。

この選択に、正直俺は驚いた。
芽衣子の性格なら銀地の方を選ぶと思ったからだ。