クールな御曹司は傷心令嬢を溺愛で包む~運命に抗いたかったけど、この最愛婚は想定外です~

「あのこれ…京都潮堂の芋羊羹ですよね? 期間限定でしかも数量限定の」
「あら! よくご存じね」
「私、ここの羊羹が大好きなんです…! すごい、特に芋羊羹は予約も受けてもらえないから幻の一品って言われているのに」
「潮堂さんの奥様がうちのご贔屓さんでね、いつもこの時期になったらくださるのよ。よかったわぁー! そうとなれば、さっそく食べましょうよ。雅己、お煎茶くらいあるでしょ? 淹れてきて」
「はいはい…」

と、キッチンに向かった雅己さんの後を追っていく私。

「雅己さん! お茶、私が淹れるわ」
「いいよ、気を遣わないで、って母さんと二人きりになるのも気を遣うか」
「ううん、違うの、ほら、雅己さんまだガウンのままだし…」

ああ、と雅己さんは苦笑する。

「淑女二人の前でこの格好は失礼だったね」
「そ、そうじゃないけど…、その、潮堂の羊羹には濃いお茶が合うから、その…」

雅己さんは失笑した。

「なるほど、美味しいお菓子に合うお茶は、自分で淹れたいってことだね」
「だ、だって潮堂の羊羹は本当の本当に美味しくてね…!」
「はいはい分かったよ」

雅己さんはくすくすと笑っている。

私ったら…お菓子に興奮し過ぎだわ…。

と、かぁあと熱くなる頬に、雅己さんが不意打ちにキスをした。

「じゃあお願いするよ。君が大好きなお菓子、食べるのが楽しみだな」