「やば、めっちゃ王子様って感じ。しかも着物なんて、幹部って言えばスーツのイメージだったけど」
「ほら、うちのグループって呉服店から始まったから。呉服店の娘だった創業者が事業を継いでから今の状態に拡大したから、その御曹司も着物に慣れ親しんてるってわけよ」
「へー!」

一緒になって盛り上がるパートのおばさまの説明に、みんな甲高い声で感心する。

すると専務と黒スーツの二人が私達を見やった。
とっさにみんな一斉に頭を下げる。

つられて下げる私だったけれど、なんだか私達のその恐縮しきった反応が、まるで若殿様にひれ伏す平民のように思えてちょっと愉快…なんて呑気に思いながら顔を上げた瞬間、私の心臓は跳ね上がった。

まだこちらを向いている専務の顔を正面から見て、私の脳裏に衝撃が走ったからだ。

似ている。
あまりに似ていた。あの人に―――。