「最後、ですか?」

「はい、最後の夜になります…」

「それは何で…あっ、もしかして失恋したと言うヤツで」

「いえ、違います」

私は首を横に振ると、
「母方のおばの会社を手伝うために故郷へ帰るんです」
と、言った。

「はあ」

「今年の2月にあった健康診断でおばが乳がんになっていたみたいで…幸いにも早期での発見だったので、今年の4月に手術をしたんです」

「それはそれは…」

「手術は成功しておばは元気なんですけれど…ただもう先行きが不安で、そのうえ身内も私1人なものですから、おばを1人にする訳にはいかないと思いまして」

「1人って、ご両親は…?」

「両親は私が小学2年生の時に交通事故で亡くなりました。

おばは私を引き取って、会社を経営しながら1人で育ててくれたんです」

「そうなんですか」

彼が返事をしたタイミングで、先ほど私が注文したものがきた。