「京橋さんの所属事務所『亀西興業』は無事に不受理が成立したこととあなたに一切の追及はしないと、そう言っていたわ」

「はい…」

「羽村さん」

絹子さんに呼ばれた羽村さんは、
「本当に、すみませんでした…」
と、スーツの胸ポケットから何かを取り出した。

退職届だった。

「もう…もう、こんなことはしません…。

あなたたちの前にも2度と現れません…」

そう言った羽村さんの手から絹子さんは退職届を受け取った。

羽村さんはゆっくりと立ちあがると、私に向かって躰を深く折り曲げた。

それからリビングを後にすると、玄関からドアの開閉する音が聞こえた。

帰ったようだった。

「絹子さん…」

騒動は解決したと、そう解釈をしてもいいのだろうか?

そう思った時、
「ーーッ…!?」

温かい水が足を伝ったのを感じて、地面に視線を向けた。