明人の誕生日に始まった交際から数日が過ぎ、二人揃ってどんどん訪れる初めて尽くしをおままごとの様に楽しんでいた。

「明日はどこか行こっか。」

「ほんとっ!どこかってどこですか!?」

「うーん。一緒にいられたら、別に・・・ね。」

「あ、あ、ああ、私もそれは、同じです・・・。」

「ほんと?なんだか怪しいな。正直に言って。」

「あ・・・うん。遊園地、とか・・・?あ、でも暑いしそんなありきたりな場所嫌ですよね?他に何も思いつかなくて、言ってみただけなんですっ。」

「あは。行きたいんでしょ?ほら、もう一回正直に言いなさい。みいちん。」

「みいちん!?何ですかそれ。恥ずかしいから止めて下さいよぉ。」

「で、行きたいの行きたくないの?」

「あっ。行きたい・・・です。」

かわいい。かわいい彼女がかわいすぎて、明人はいつもはむっとしたくなる。

「明日立花さんの家の近くまで8時半に迎えに行く。」

「どういう事ですか?」

「明日頑張って車出すよ。」

「ほんとっ!?いいんですか?ドライブデートなんて憧れで夢みたいです。嬉しい。ありがとう。」

「誰かを乗せるのちょっと怖いけど、気を付けます。」

「わかりました。じゃあ私はお昼ご飯を用意していきますね。」

「うん。」

付き合いたての明人と水樹は、きっと他の皆の付き合いたてと同じように、過多なくらい熱量を出しながら熱い最初の夏と反応していた。そして明人は遊園地へ行く朝、‘着いた’ と送信し、従兄弟に貰った10年落ちの車を降りて水樹を待った。免許を取ってまだ一年、大事なひとを乗せて運転するのはより緊張するものだ。

「おはよ。」

「おはよ・・・ございます。」

水樹の敬語がまだまだ抜けなくて面白い。

「車持ってるなんて凄いですね。後ろにドアが無くてかっこいいです。」

「バイト代は車の維持費に消えるけど。それに売る時は従兄弟に返すんだよ。狭い所ですがどうぞ。」

明人もシートに座りミラーを確認後ベルトをしてチラッと助手席に目をやった。水樹が明人を見て微笑んでいた。そして一度水樹の手を握ると、気合を入れ直して車を出発させた。