暑かった。

あれ、俺寝てた・・・?

意識を向けると今日は雲が全然ない。次第に視界もクリアになり停止していた思考回路のスイッチがオンになった。隣には聖也がいて、聖也はあぐらをかいて携帯をいじっていた。

「お前いびきうるせーよ。では京都に戻りますか。」

新幹線の出発まで時間を潰しつつ今度は本当に京都駅に到着した。

「ホームまで来なくていいですから。」

「馬っ鹿見送りじゃなくてN700S見にきたんだよ。」

「はは。あの、のぞみの切符代なんですけど・・・。」

「おう。入場券2回分と併せて300万だ。今すぐ耳を揃えて払ってくれ。」

「あるわけないじゃないですか。」

「じゃあ300円にまけておいてやるよほら早く払え。」

本気か冗談かわからなかったけれど、瞬介はたじろぎとりあえず財布から硬貨を取り出して聖也に渡した。

「はい。300万円です。」

「しょーもなっ。」

先に自分でぼけたくせにこれだよ。と瞬介は呆れて気が抜けた。

「それで車内販売のカップアイスでも買えよ。」

と瞬介の硬貨がまるで聖也に奢られたようにすり替わって返ってきた。

「ぷっ・・・。」

吹き出さずにはいられなかった。

「爆笑だな。」

瞬介はやっと笑った。そしてドサクサに紛れて聞いてみた。

「ねえ。聖也君が失恋した人ってどんな感じの人なんですか?」

「はっ!?」

「えっ?」

「それ聞いちゃう?仕方ねーなー。まああんま覚えてないけどさー。ははっ。背が低くて相当気が強くて周りに流されなくて滅多に笑わない最高の女だったよ。」

「はあ・・・。うーん、あんまよくわかんなかったですけど・・・でもありがとうございました。色々・・・。」

少し何かを考えた後で聖也は返事をした。

「羽柴あのさ・・・。生きていたくないってのはさ、死にたい、よりももっと悲しい状態なんだぜ。ま、お前には関係のない話だけどさ。」

瞬介は目線を下にした。