「入れよ。」

「お邪魔します・・・。」

部屋はポスターや雑貨、聖也のアクセサリー、友達との写真が飾られていて、それから教科書や参考書にパソコンもあり、とにかく物が多いという瞬介の印象だった。

「いつか来ると思ってた。んで辛気臭い事うじうじ考えてねえだろうな。ま、せっかく遠路遥々来たんだし楽しんで帰れよな。そんで今夜は飲み会があるからお前も来いよ。」

まるで瞬介が失恋する事がわかっていたみたいな失礼な言い草で、つまりは聖也には全てお見通しという事だ。

「聖也君。飲み会あるなら行ってきていいですよ。俺部屋で待ってるから。」

「うるせーって。んな小便臭い事言ってたら世の中の美人からそっぽ向かれるぜ。それにたまには外の空気吸うのも大事だからよ。」

「うん・・・。」

それから夕方まで部屋で過ごし、その後は電車に乗って居酒屋まで移動した。

「誰と飲むんですか?俺まだ18ですけど。」

「わかってるって。俺は別にお前が酒飲んでもいいと思うんだけどさ。ま、何かあって捕まるのも嫌だからお前はジュースな。で今日のメンバーは、俺の大学の研究室の野郎と、その女友達。そんでその友達やら後輩やららしいぜ。」

え、それってつまり?と瞬介は付け加えた。

「知らない女の人と話すテンションじゃないですよ・・・。」

「まあたまにはいいからって。井の中の羽柴、大海を知るの巻、ってな。お前母性本能くすぐるキャラだからモテるんじゃね?」

相変わらず強引だな。と瞬介は苦笑いしたけれど、でもきっとこれは自分の為に組んでくれた飲み会なんだと理解でき、それにこんな事は人生さいごだろうと思い、ありがとうと素直な気持ちで参加を決めた。

そして、突如として舞い降りた生まれて初めての男女の飲み会、つまり合コンという名の舞台に瞬介は、水樹への失恋を横に片付けて、異常な程の緊張状態で臨む事になった。