おもいでにかわるまで

明人がまた笑い、そしてやっと明人に念願の挨拶をする事ができた水樹は気持ちが軽くなった。それに、フイッと無視されそうだと緊張しながら挨拶をしたのに、予想もしなかった ‘バイバイ。’なんていう優しい返事は印象深く胸に響いた。

また明人のお陰で元気が増えた事に対して、水樹は心の中でお礼を言った。なんだか昨日から明人に世話になってばかりだ。でも、機会があればこれからも少しずつ話し掛けたいし、もっとクラスメートらしくなって欲しいと思う。

そして水樹はゴミを捨てた後、いつも通りグランドに向かった。

「水樹ちゃん。水樹ちゃーん!水樹ちゃん待ってって。」

「あ、瞬ちゃーん、考え事してて聞こえなかった。ごめんね。」

「水樹ちゃんよくあるよね。トリップしてる事。それよりさ、来週の水曜日の5、6時間目さ、偶然にも俺と水樹ちゃんのクラス、同じ時間休講になってるの!」

「そうなの?私はね、友達と何か食べに行こうかって話してたんだよ。」

「そうなの?あのね、実はさー、俺のクラスの奴らがさ、A組にソフトボールの試合を申し込もうって言っててさー。」

「え!やりたいやりたい。」

「でしょでしょ!?水樹ちゃんがバレンタインの時に俺にお菓子持ってきたじゃん?あの時からうちのクラス、A組に妙に対抗意識燃やしちゃってさ。だから俺頼まれてるの。だから水樹ちゃん人集めしといてよ。よろしく!」

水樹はまずは野球部の子に聞いてみようと思いついた。人集めは大変そうだが、それよりもまたソフトボールが出来る事が嬉しくて、水樹は不気味な程に笑ってしまった。

「瞬ちゃんほんとにほんとに楽しみだね。ありがとー。」

「えっ、あ、そ、そうだねっ・・・。あ、こ、今年も、川とか海とか、また礼と3人で行きたいね。ま、たまには礼抜きでもいいけどさ・・・。」

「礼はしっかりしてて仕切り役だから、私達だけだと心配だよー。」

「はは。そ、そだね・・・。」

瞬介と話しながらコートに着くと、ベンチには女の子が座っていて、そばには勇利が立っていた。

「ちわーっす。その子もしかしてマネージャー希望ですか?」

「瞬介水樹ちゃん。おーっす。」

水樹は緊張している様子でベンチに座っている可愛い女の子に話し掛けた。そして、自分も1年生の時はこんなにも初々しかったのだろうかと昔を懐かしみ、それから夏子や聖也との大切な思い出を蘇らせた。

「こんにちは。もしかしてマネージャーの見学に来てくれたの?」

「はい。今日は色々見て回ってます。」

水樹も実験やアルバイトがあるので、今年は絶対にマネージャーが欲しいと思っていたのだった。