「水樹ー、やっと同じクラスになったね。一年間よろしく!」
   
「うんよろしくね。それに部活の引退まであと少し。夏の大会、絶対頑張ろうね。」

中学生活最後の春を迎えた水樹は、夢と希望と、漠然とした不安をほんの少しだけ胸に充てんさせながら、部活の仲間でもある友人と教室に向かっていた。

「ほんと受験嫌だよねー。でも水樹は、頭いいからどこでも受けられていいじゃん。」

うーん・・・と心の中でうなったまま水樹は黙り込んだ。

とうとう中学最後の年になってしまった。そう、受験だ。でもまだ何も決まっていないんだ。もちろん将来の方向性も決まっていない。私は高校で何がしたい?何ができる?何にも思う事がないんだよね。今の時点で将来の夢を確定させている人もいるのにな。はあ・・・。

「どした?」
「なんでもない。」
「あ、前田君も同じクラスだ。ラッキー。」
「好きだっけ?」
「全然。」
「あは、何それ。」

友人の明るさに救われつつ、とりあえず目の前にある事を頑張ろうと水樹は緩く決心した。