「あ、あの!」
このまま大人しくしていようと思ったが、聞き捨てならない話が出てきて声を上げた。
背の高い二人の男が一気に視線を寄せてきて、ひっ! と肩を震わせる。
またじわりと目に涙が浮かんだ。
「ん~? どうした? おいおい泣くな泣くな! 怖くないぞ~」
魔王と思しき男は、しゃがみ込んでレティシアの顔を覗き込んでくる。
恐ろしいと思っていた男は意外にも格好良くて、一瞬涙が引っ込んだ。
あやすように抱き上げられ、レティシアは彼の腕の中にすっぽりと収まる。
本当に自分は子どもになってしまったのだと、恥ずかしいやら驚くやらで目を白黒させた。
「どうした? ん?」
声も言葉も優しい。
禍々しい魔力が彼を包んでいるというのに、本当にこの男は魔王なのだろうかと疑ってしまう。
レティシアは小さな手で懸命に涙を拭いて、言葉を絞り出した。
「あの、わ、私を……城に連れて帰るのは……み、皆さんで私を……た、食べ……うぅっ」
このまま食べられてしまうのか。
そう思ったら涙がまた溢れてきてしまった。
美味しそうに皿の上に盛りつけられたレティシアが、フォークを持ち凶悪な顔をして舌なめずりする魔族に囲まれている様子を想像する。
想像だけでこんなに泣けてしまうなんてどうなってしまったのだろうと、レティシアは自分で自分をコントロールできなくなった。

