「そんなに怯えるな、レティ。皆、お前が可愛くて仕方がないんだ。この城には子どもがいないからな。だから甘やかしたくなる。我が儘を言ってほしいんだよ。逆に、大人びていて心配になるくらいだ」
でも、本当のレティシアは大人だ。
我が儘を言える立場でもなく、子どものように振る舞うのはあってはならない。
大人びて当然だ。
けれども、許されるのであればもっと我が儘を言ってみたい。
自分の気持ちを受け止めてくれるという安堵感を味わいたい。
どうせ、また人間の国に帰される身だ。
期間限定の居候で、あと二十日ほどでいなくなる。
だから、今だけは。
きっとあちらに戻ったら、元の自分になるから。
そう思って、レティシアは頷いた。
「――私、明日、デザートを食べてみたいです」
ずっと食べてみたいと思っていた。
けれども贅沢品である肉を食しているので、デザートまで手を伸ばしたらさすがにいけないだろう自重していたのだ。
だが、この際だから味わってみたい。
それが次のレティシアの我が儘だ。
「お前は欲がないなぁ」
ゲオルグは笑いながら頭をわしゃわしゃと撫でてきた。
自分なりに精一杯の我が儘を言ったつもりだったのだが、欲がないと言われてしまった。
(……我が儘って難しいのね)
初めて知った難しさだった。

