「このままお前を城に連れて帰って、また森が開く三十日後にあちらの村まで送ってやるよ」
「……でも、さすがに、城に行くというのは……」
つまりは敵の本丸に幼女の姿のままで行くということだ。
もしも滞在中の三十日の間に聖女とバレてしまったら、食べられないにせよ殺されるくらいのことはあるのでは? と考え込んだ。
「このままどこかの宿に置いていってもらっても……」
「いいのか? 街中には人間の肉を好む奴はいるぞ?」
「ひっ!」
「匂いですぐに人間だってバレる」
「うぅ……」
「だから、城にやってきた方が安全だ」
そこまで言われて、レティシアは渋々頷くしかなかった。
ここにいても死、町に滞在しても死、城に行ったら……生き残れる可能性はある。
「来いよ。帰れるまで城で面倒見てやる。もちろん、食べないし殺しもしない。安心しろ」
誘いつつも、足はもう森の外に向いている。
抱き上げられたままのレティシアには、拒否権はさほどないようだ。
「俺はゲオルグ。お前の名前は?」
「……れ、レティ……です」
一瞬本名を名乗りそうになったが、思いとどまってレティと名乗る。
魔王……ゲオルグは嬉しそうな顔をして笑った。

