「失礼致します」
「入れ」
その声とともに広間へ入る。
「まだそんな従者を連れているのか…
フッ、これだから凡人は…」
そんな事言われても、もう何も感じない。
「何の用ですか」
「それが父親に対する口の利き方か」
「あなたのことを父親だと思ったことは1度もない」
「生意気なヤツめ」
こいつの口からこんな言葉が出てくるとは思わなかった。
父親と名乗れるようなことをしてなかったくせに、よくそんなことを言えたものだ。
「まぁ、いい。
お前には結婚してもらう。」
大概の予想はついていたためそう驚きはしない。
「どこの家ですか」
「久瀬だ」
「久世の誰とですか」
「当主とだ」
「はい」
少し、驚いた。
まさか、久瀬の当主の元へも嫁ぐことになるとは…
確かに、今まで久瀬に送られた人達はいた。
でも、あれだけ頑なに当主は妻を貰わなかった。
なのに何故今更…
「今日の午後出発だ。
準備しておけ。」
「はい」
そう返事をし広間をでる。
父上は、私のことをどう説明しているのだろうか…

