「……珍しいね。ここに誰かがいるなんて」

「……っ!」

男の子の口から出たのは、日本語じゃない聞いた事のない言語。でも、彼の言ってることが理解出来るんだ。

「……ねぇねぇ!名前は?僕は、リオン!8歳なんだ!!」

そう言って、彼……リオンさんはにこりと笑う。

「……ノワール。5歳です」

僕の口が、勝手に動いた。多分、僕は異世界に転生してから今までの記憶を失っている。

じゃなきゃ……僕がリオンさんの言葉を理解出来るはずも、転生した後の僕の名前も、年齢も分かるはずがない。

「そっか!ノワール……いい名前だね!!」

そう言って、リオンさんは僕の名前を何度も呟くと元気に笑った。

「……ありがとうございます……リオンさんも、いい名前だと思います」

僕がそう言ってリオンさんを見ると、リオンさんは不思議そうな顔で僕を見る。

何か変なこと、言ったかな?……って、そうだった……僕、5歳なんだ!!……あれ?5歳って、敬語使うっけ?

「……ありがとう?えっと……ノワールって言ったっけ……ノワールは、どうしてここに?」

「それが……僕には、分からないんです。ここはどこなのか、どうしてここにいるのか」

僕は、今世での自分の名前と年齢しか覚えてないことをリオンさんに話した。