水の音を感じて足を向ける。遠くから男の子の声が聞こえてきた。
「ボクだって!ボクだってできるんだ!」
噴水に向かって手を振る男の子の後ろには母親と思われる女性がベンチに座って見守っている。
近くに双子が歩いてきたのに気付いた男の子は、びっくりした表情で母親のもとに走り寄ろうとするが思いとどまりしっかりと二人を見つめてきた。
母親の手に今回のステージのパンフレットがあるのを見て翼は声をかけた。
「キミもあの凄い人たちを見てきたの?」
男の子はきをつけの姿勢で答えてくる。
「そうだよ、でもボクだってできるんだ、僕は怖くないぞ!」
翔はしゃがみ込むと男の子に『見せてくれる?』と聞く。
「いいよ!」
男の子はさきほどまでやっていたように噴水に手を振り始める。綺麗な放物線を描く水が左右に揺れ始めた。
「おっ、すごいじゃん」
翼の言葉に胸を張る男の子は自慢げに腰に手を当てた。



