翌日、病院に行く前に実家に寄ることにした。病院で待ち合わせをしてもよかったが、直接今の姿を見てもらいたい気持ちも強かったからだ。

 玄関を通り、リビングに入った所で母親と出会う。翔と翼の姿を見た母親は立ち尽くし、口元に手を当てたまま膝から崩れ落ちた。


「翔…!翼…!」


 言葉にならない声を出して一気に涙が溢れてくる。

 ゆっくりと立ち上がり二人に近づくと勢い良く抱きしめた。二人は締め付けられる強さに驚きながらも悪い気はしなかった。

「どうした?」

 キッチンから出てきた父親が二人に気付く。重なる二人に少しだけ違和感を覚えた。

 双子から体を離した母親が二人に重なってないで並んでちょうだいと声をかける。

 翔が動くと翼が薄くなり、翼が動くと翔が薄くなる。

 二人が共にこの世界に生きていることを認識できた父親は閉じた口を震わせながらたっぷりと目に涙を浮かべる。

 特に何かを言うことは無かったが、二人の背中をしっかりと叩いた。

 その時、翔のスマートフォンの通知音が鳴った。

 いつかのショーを見せてくれた悟からだった。