由美からの返信をもらった日の夕方、退院の準備を終えた双子はまだ病院の中にいた。院内で由美と会うことになっていたのだ。

 病院内の会議室を利用して、看護師からの説明を聞くためだった。

『コンコン』

 ドアをたたくノックの音が聞こえた後、由美が会議室に入ってきた。

「はじめまして。花村由美さんですね。土倉麻未さんの担当をしています」

 簡単な挨拶をしてから席に座るように促し早速だけどと話を始めた。

「麻未ちゃんとは小学校が一緒だったそうですね。その後の彼女のことは何も知らない状態ですか?」

「インターネットで見た情報しか知らないです。どれが本当の事なのか全くわからなくて…」

 由美も都市伝説と謳われていた記事を見ていたようだ。あの記事を信じているとしたら今この病院は人体実験をする怪しい建物だと思っているかもしれない。

「インターネットね…。麻未ちゃんはとても不安定な精神状態です。
 それでもこの病院で何か怪しげな実験が行われていることはありません。
 見てしまった事故は小学生当時の麻未ちゃんにとってはショックが強すぎた。そして思春期に入りかけていた彼女の自己意識を崩してしまった。
 自分のせいであの事故が起こってしまったと責め続けているの」

 由美は看護師をしっかり見つめて顔をこわばらせている。これから聞く話を受け止める覚悟を決めているようだ。