悟が手をかざすとそれはかわいらしいウサギの氷像となる。
 あかりの左手の上に鎮座するウサギを見て歓声があがり、しばらく観客に見せた後であかりに右手をかざされたウサギはゆっくりと水へと戻っていった。

 あかりの能力は、おそらく物に熱を加えるものだろう。

 次々と新しい氷像が作られ、模様がつけられたり、細かい彫刻が彫られたりと凝ったものに変化していく。

 最後は大量に用意してあった水の大半を晃が浮かび上がらせ煎餅のような薄い丸い形に変化させていく。

 外側から少しずつ穴が開き、水が踊りながら模様を描き続ける。

 直径一メートルほどの大きな丸い水は、一センチ単位の模様を刻み、最終的には綺麗なアラベスク模様が浮かび上がった。

 晃が悟に目で合図をする。


「一瞬で消えてなくなりますので、瞬き厳禁です」


 そう言って悟はあかりに目で合図する。

 大きく腕を振り上げた悟の力が晃の作り上げた水を氷へと変化させる。


 透き通った模様は周りの自然と溶け合って鮮やかな緑を映し出し、そのまま重力に引かれて地面へと落ちていく。


 下に置いてある桶にぶつかって砕ける直前、あかりが手をかざし一瞬にして下から上へと水に戻っていった。