「ビール、あったよビール」
翼が声を上げて屋台へ小走りで近づいていく。
「待て待て、動くと言ってから走ってくれ」
急いで翼についていく翔。その二人を見た屋台のおじさんは目を見開いてひとつ唾を飲み込んだ。
「ビール、二つください」
少しだけ委縮した翼が声をかけると、落ち着きを取り戻したおじさんは『あいよ、二つね』と言ってプラスチック製のコップを二つ用意した。
胸をなでおろした翔は財布を取り出す。
「あいよ、二つで九百円だ」
「え、嘘。高い!」
そう言ってから口を押えた翼は取り繕うようにごめんなさいと言う。
「はははは、屋台のものってのは高ぇんだよな。でも、安いほうだと思うぜ」
酒は毎日飲むわけでもなく、ビールはあまり選んでこなかった翼にとっては、スーパーの缶ビールと比べてしまったのか絶句してしまう。
「屋台のビールと缶ビールは全然違うらしいぞ」
支払いを終えた翔はビールサーバーの上に置かれたコップを受け取り一口グビっと飲んだ。
「やばい、これは美味いぞ。翼も飲んでみろよ、ビールが好きになるかもしれない」
コップに手を伸ばした翼も一口飲み、二口三口と喉を鳴らす。



