さまよう


「このお祭り会場はあまり広い所じゃないみたいだね」

 会計を終えた二人は窓に張り付けてあるポスターをまじまじと読み始める。


「そこのお祭りは結構人気よ」

 声をかけてきたのは少しだけ顔なじみになったスーパーの店員だった。

「最近引っ越してきたのなら知らないだろうけど、特に子供たちに人気でね。屋台も五、六店舗くらいしか出ない小さなお祭りだけど結構おすすめよ」

 そう言って店員は付近に溜まっていた買い物かごを片付けるためにどこかへ歩いて行った。

 まだあまり人と会話し慣れていない二人だったが、せっかくおすすめしてもらったのだ、少しだけ興味を持った。

 祭りは翌週の土曜日。それまでに祭りではどんなことがあるのかリサーチをして、心の準備を整えて向かうことになる。



 そこまで大きいと言えない公園の真ん中には櫓が建てられており、大きな太鼓が設置されていた。

 屋台の数は確かに少ないが、広々とした空間にはテーブルと椅子が何組か用意してあり、また公園の周りのベンチにもカップルや家族連れが笑顔で思い思いに楽しんでいる姿が見られる。