翔と翼はベッドに腰かけてスマートフォンを見つめている。

〈由美さんにとって自由って何だと思いますか?〉

 そのメッセージの返事が来るのを待っていた。既読されているのは確認済みでじんわりと手に汗を握る。

 小さな通知音とともに二人のスマートフォンが彼女からの返事を表示する。

〈やりたいことをやって、楽しいって思ってるときは自由だって思いますよ〉

 二人は相談して翔のスマートフォンから返信する。

〈服が欲しいと言ってお金をもらえるのは自由?〉

〈ある意味自由だとは思いますが、そのうち心が無くなりそうですね〉

〈心が無くなるとどうなる?〉


〈前に進むことをやめてしまう。後ろに下がることもしなくなる。時が止まってそして、忘れられるんです〉


 心が無くなって、忘れられる。それはどういう意味だろうか。


〈俺たちは心を無くしているのか?〉

 少しの間があってから通知音が鳴る。

〈これだけ質問する人は、前に進もうとしている人だと思いますよ〉