兄が翔。弟が翼。一卵性の双子で二十歳を超えた今もそっくりで、身長や体形も似通っている。

 掃除機をかけ終わった母親がダイニングの椅子に座ると少し遠くに置いてあるリモコンを指刺す。テレビの電源が入る。そのまま指先が動き続け、次々とチャンネルが変わった。

 この世界には特殊な能力を持つ人間が一定の確率で産まれてくる。


 時を操るもの
 水を操るもの
 水を作り出すもの
 火を操るもの
 火を作り出すもの
 物質を操るもの


 双子の母親は物質を操るものとして産まれてきた。能力を体の一部に取り込んだものは、徐々にその能力を覚醒させ、ゆっくりと使い方を覚えていく。

 人により力の強さも違えば、幼少のころからマスターするものもいる。もちろん力が弱すぎて普通の人間と何ら変わらないものもいる。

 能力を体の一部に取り込んだと分かった場合、その時点で国に申請を出さなければいけない。それは周りを守るためであり、能力者本人を守るためである。

 双子も能力を持ったものだった。能力者が能力者を産む確率も、普通の人間が能力者を産む確率も変わらない。持って生まれた性格の一部と呼べるだろう。

 双子の片方だけ能力者になることもあるし、二人とも能力者となっている例もある。翔と翼は両方とも能力を持っていた。

 持っていた、というより能力に取り込まれていた。