「別の店を探そう」

 行くぞ、と動き出そうとしていた翔の後ろに重なっていた翼はわかったと呟き一足遅れて歩を進める。


 その時翔の後ろを通り抜けようとした女性が翼とぶつかった。彼女の目には翔の姿は映っていても翼の姿は認識されていなかったのだ。

「ごめんなさい」
 とっさに謝る翼。スーツの男性が一人近付いてくる。

「こちらこそごめんなさい、よそ見していました」

 そう言って苦笑いをする女性の目には翔と翼が交互に認識されていることだろう。

 翼が頭を掻いたり、翔が手をポケットに入れたりしている。何だか不思議な違和感があった。

「あの、この辺にドライフラワーのお店はありませんでしたか?」


 驚いた。声をかけてきた。


 興味本位で質問を浴びせたりするような人はもちろん居たし、汚い言葉をぶつけてくる人も居る。しかしそれは双子が特殊な人間だからと攻撃するための言葉だ。

 今回はどうだ。彼女は質問してきたのだ、店を知らないかと。これは決して攻撃的な言葉ではない。

「あ、いや、ちょっとわからないです…」

 二人は共に後ずさりながら小声で返事をした後振り返って足早に歩き始めた。