有無を言わさず冷たいコンクリートに叩きつけられた、幼い体。
先程まで陽子と繋がれていた手のひらが、ギュっと握りしめられている。
その指にはめられたおもちゃの指輪だけが、微かに光を放って見えた。
「振り返ったら意識を戻したお前が泣いててね、俺、すべてをお前に見られたと思った。
だけど、目の前で殺された月子を見て混乱したのか、泣いてるばかりだし…
最後には『ようちゃんは?』って、言い出すだろ。
これは、使えるって思ったんだ。
自分の事を、目の前で死んでしまった『月子』だと、勘違いした『陽子』をね。」
当時を思い出しながら、寒々しく笑う敦。
その目には、何も映っていないように感じられる。
「田畑はその後何も言わずに逃げてしまったよ。
それで、お前が見たっていう田畑にかこつけて、すべてをなすりつけてやったってわけ。
結果、田畑は捕まった。
でも、警察で真相を話す事もなかったみたいだし、ひとまずその場は安心したのさ。」
少し寒くなってきた音楽室の窓を閉める敦。
手のひらに微かに付いた埃をはたくと、話しを聞き入る陽子を振り返った。
「月子をこの手で殺してしまったのはかなりショックだったけど、それでも俺の隣には、月子そっくりのお前がいる。
自分を月子だと思い込んだ、優しい性格のお前がね……」
そう言い、にっこりと陽子に微笑む敦。
その笑顔に不安を覚え、陽子は体を堅くした。
先程まで陽子と繋がれていた手のひらが、ギュっと握りしめられている。
その指にはめられたおもちゃの指輪だけが、微かに光を放って見えた。
「振り返ったら意識を戻したお前が泣いててね、俺、すべてをお前に見られたと思った。
だけど、目の前で殺された月子を見て混乱したのか、泣いてるばかりだし…
最後には『ようちゃんは?』って、言い出すだろ。
これは、使えるって思ったんだ。
自分の事を、目の前で死んでしまった『月子』だと、勘違いした『陽子』をね。」
当時を思い出しながら、寒々しく笑う敦。
その目には、何も映っていないように感じられる。
「田畑はその後何も言わずに逃げてしまったよ。
それで、お前が見たっていう田畑にかこつけて、すべてをなすりつけてやったってわけ。
結果、田畑は捕まった。
でも、警察で真相を話す事もなかったみたいだし、ひとまずその場は安心したのさ。」
少し寒くなってきた音楽室の窓を閉める敦。
手のひらに微かに付いた埃をはたくと、話しを聞き入る陽子を振り返った。
「月子をこの手で殺してしまったのはかなりショックだったけど、それでも俺の隣には、月子そっくりのお前がいる。
自分を月子だと思い込んだ、優しい性格のお前がね……」
そう言い、にっこりと陽子に微笑む敦。
その笑顔に不安を覚え、陽子は体を堅くした。



