「なぁ、麻美?」
突然ノックされた、バスルームの扉。
引き込まれていた不思議な狭間から、麻美を一気に呼び戻す。
一枚隔てたその向こう側からかけられた隆之の声に驚き、麻美は小さく肩を揺らした。
「な、何?」
それはまるで、鏡越しに見つめていたもうひとりの自分が慌てているように見える。
ゆっくり扉を開け、向こう側に立っている隆之を見上げた。
夜半過ぎ。
この寒空の下に出掛けるように、しっかりと防寒している隆之の姿。
「どっか出掛けるの?」
その麻美の問いに、やんわりと頷いた。
「今日聞いた、10年前の事件の話し。
もう一度詳しく、探ってくるよ。
警察関係者とか病院関係者とか、なんかもう少し詳しい奴……」
いつにない、真面目な表情を浮かべた隆之。
確実に狙われている月子の身を、案じるよう。
麻美も早く手を打つべきだと、その隆之の言葉に頷いた。
「でも、
あにきに、そんな友達いたっけ?」
「まぁな。
オレの学校の卒業生の中にも、月子ちゃん達と同じ小学校だった生徒がいるだろうし。
そいつらにあたれば、何か掴めると思う……」
その言葉に小さく頷き、麻美は言った。
「ありがとうね、あにき…
頼りにしてる。」
いつにないしおらしい麻美の態度に、隆之にも笑みがもれた。
クシャっとその濡れた頭を一撫ですると、なにも言わずにバスルームから出て行く。
麻美にほんのりと火照る、仄かなぬくもりだけを残して……
突然ノックされた、バスルームの扉。
引き込まれていた不思議な狭間から、麻美を一気に呼び戻す。
一枚隔てたその向こう側からかけられた隆之の声に驚き、麻美は小さく肩を揺らした。
「な、何?」
それはまるで、鏡越しに見つめていたもうひとりの自分が慌てているように見える。
ゆっくり扉を開け、向こう側に立っている隆之を見上げた。
夜半過ぎ。
この寒空の下に出掛けるように、しっかりと防寒している隆之の姿。
「どっか出掛けるの?」
その麻美の問いに、やんわりと頷いた。
「今日聞いた、10年前の事件の話し。
もう一度詳しく、探ってくるよ。
警察関係者とか病院関係者とか、なんかもう少し詳しい奴……」
いつにない、真面目な表情を浮かべた隆之。
確実に狙われている月子の身を、案じるよう。
麻美も早く手を打つべきだと、その隆之の言葉に頷いた。
「でも、
あにきに、そんな友達いたっけ?」
「まぁな。
オレの学校の卒業生の中にも、月子ちゃん達と同じ小学校だった生徒がいるだろうし。
そいつらにあたれば、何か掴めると思う……」
その言葉に小さく頷き、麻美は言った。
「ありがとうね、あにき…
頼りにしてる。」
いつにないしおらしい麻美の態度に、隆之にも笑みがもれた。
クシャっとその濡れた頭を一撫ですると、なにも言わずにバスルームから出て行く。
麻美にほんのりと火照る、仄かなぬくもりだけを残して……



