車を走らせて1時間ちょっと。
すっかり車では爆睡してしまった。多少の眠気は取れたものの、もう十何時間も座っているからお尻が痛い。睡眠の後はテキトーにスマホゲームで時間を潰す。

"着いたよ"

ダン兄さんの声でふと車窓から外を見た。
初めて見る日本の高校。

なんだこれ全然イギリスと違う。学校の造りも雰囲気も。

嫌でも日本に来てしまったんだ、と実感させられる。
ダン兄さんに続いてパパとママが車から降りる。僕も仕方なく降りる。

もう少しで太陽がその日の役目を終えようとしている。最後に力を振り絞るかのようにものすごい眩しく光る。
そんな夕日を目を凝らしながら見ていると、ふとグラウンドが目に入った。

フットボールやってる。僕もやりたいな。

と、思ったのも束の間、そのフットボールをやっている人たち、の横で一緒懸命声を張り上げている白いユニフォームを着た人たちに目を奪われた。

なんじゃありゃ、ユニフォームも泥だらけだし意味のわからない掛け声を言いながらボール追いかけてるし。

僕が夢中になって見ているのに気づいたのかダン兄さんが、

“あれは野球だよ。イギリスでは馴染みがないだろうけど名前は聞いたことあるだろ?”

“野球…”

言われてみればアメリカで有名なスポーツくらいは知っていたけどちゃんと見たことがなかったし、とても新鮮なものだった。
でも野球って投げて打って取る。それだけで何が楽しいの?フットボールの方が100倍楽しいのに、なんであんな必死に泥まみれになりながらボールを追いかけているのか僕には理解できなかった。