何かを吹っ切るように美里は顔をあげた。
「いいよ、食べ物の好き嫌いないから…でもあんま食べれないかもしれないけど…さっきお菓子つまんじゃったから…」
美里は嘘をついた。
「よっしゃぁじゃあ付き合って〜腹ペコMAX!」

美里と智輝はバスに乗り込む。いつもと反対方面だ。(嘘をついてしまったのでなんだか気まずい…)
智輝も美里と会話せず窓の外を見ながら何かを考えている様子だった。美里もくるくる変わる外をずっと眺めていた。

降りた停留所から歩いて5〜6分、そこは焼肉屋だった。
美里は自分の病気のことを智輝に知られたくなかった。でも焼肉なんて食べられる自信がなかった。
「わたし、本当にあまり食べれないかもだけどごめんね、でも智輝は気にせず食べてね、あっ呼び捨てしちゃったゴメン…」
「いいよ〜なんなら智(トモ)って呼んでってかその方がぃいかな(照)」
「わかったぁじゃあこれからトモって呼ぶね」(なんだか恥ずかしいケド慣れるかな)
「俺誘ったしもし食えなかったら美里ちゃんの分まで食っちゃうから(笑)とりあえず中入ろ」
二人は店に入り一番奥の席に向かい合って腰かけた。
美里は辺りを見回し少し落ち着かない様子だった。
「わたし焼肉屋さん来るのかなり久し振り」
智輝はニコニコしながらすぐに店員を呼んで慣れた感じで注文する。
「えーっと…タン塩、カルビ、ハラミ、ロース、ミノ、ユッケ…ビビンバとキムチ、サンチュ…あと冷麺も、飲み物は生二つで、あっ美里ちゃんお酒飲める?」
「うん、飲めるよ」(それよりそんなに一人で食べれるのかと思った)
店員は慣れない口調で注文を繰り返す。新人のようだった。
「あと美里ちゃんなんかある?」
「ううん大丈夫だよ」
智輝は新人の店員に気づいたのかニヤニヤしていた。美里の様子をうかがって
「なんだか美里ちゃんテンション低いよ〜なんかあったの?でも肉食えば元気でるさぁ!」
すごく無邪気に微笑む智輝に美里も少し落ち着いた。