可愛い動物や、自分と同じ年頃の男の子、女の子。ぴーひょろわっしょい!そんなイラストやテンポのいい掛け声も大好きだったが、何よりその物語にいつも心惹かれていた。

 散歩の途中に出会ったテントウムシとの内緒話や、空を飛んで雲や太陽とお話しするストーリーが大好きだった。

「希子も太陽さんとお話しできるかもしれないよ」

 合間に聞こえてくる母親の声も心地よかった。

 中でも希子のお気に入りだった絵本がある。

 真っ白な白うさぎが夢だったケーキ屋さんを開くのだが、練習してもなかなか上手なケーキが焼けない。

 オーブンの時間を間違えてしまったり、煙がもくもくと発生して黒うさぎになったままお店でいらっしゃいませと接客をするのだ。

 絵本の最後ではケーキを焼くのも上手になり、大人気のケーキ屋さんになっている。
 それでも時々お客さんからのお願いで黒うさぎになってお仕事をしています、という内容だった。

 母親の京子は白うさぎがケーキつくりに失敗した『黒うさぎになっちゃった!』というフレーズを毎回面白おかしく喋ってくれる。


「まっくろ~うさぎ~に~?なっちゃった~!」

 とか、

「クロウサギニナチャタ!」


 なんて凄い早口で読んでくれたりもした。

 そんな京子の読み聞かせが楽しくて何度も何度も連続で読んでもらった。

 京子も家の用事や晩御飯の準備など予定や都合もあったはずだが、長いときは一時間ほど読み聞かせ続けてくれたりもした。