「普段からあの二人なんだか察しが良くてさ。タバコもお酒も吞んでみたいし、女の子とかも連れ込んでみたいけどすぐにバレそーだ」
希子はちらりと満を見てだからやめときなさいって、と言う。
「女の子はともかく、酒とタバコは必ず二十を超えてからにしなさい。そうすれば悪い事はしてないって胸を張って言えるんだから」
そのまま対戦ゲームを再開してゲラゲラと笑いながら、談笑しながら、語り合いながら遅い時間に眠りについた。
希子の五歳の誕生日。両親が買ってきてくれたのは塗装もしていないナチュラルな木箱に入った沢山の絵本だった。
「おっきい!いっぱい!」
おぼつかない指先で取り出した一冊を輝いた目で見つめる。
床に放り出してもう一冊、もう一冊。
「これは?」
「これはおおきなかぶ」
「これは?」
「おとうさんのバイオリン」
様々なイラストに目を奪われながら最初の一冊を真剣に悩んでいた。様々なサイズの絵本はおおよそ二十冊。
当時の希子には宝箱のようにも見えていた。



