ひとしきり夕食を楽しんだ後で希子は座卓の上に置いておいた電子タバコを手に取り台所へ向かう。
換気扇を回してその下で電源を入れた。
「希子、タバコは止めておいたほうがいいんじゃないかしら?」
誰かに勧められて始めたわけではないが自分で興味を持って購入した電子タバコ。嫌煙家が増えていることも分かっているし、禁煙に成功した人が増えていることも知っている。
「まぁ、そのうちね」
少し迷惑そうに返事をする希子だったが、今のところ禁煙する予定はない。
「何かねーちゃん高校卒業してから格好良くなったよね」
何杯目かのコーラをグラスに注ぎながら満が希子を横目で見ていた。
「確かに大人っぽくはなったけれど、それでもタバコはねぇ…」
京子は納得がいかない様子だったがそれを途中での見込み、空いた皿を片付け始める。
この日は自宅から一時間ほどの実家に一泊する予定だった。元々仲の良い希子と満は満の部屋で対戦ゲームをしながら騒いでいる。
「半年ぶりなんだから満に勝てるわけないじゃん、ちょっとは手加減してよ」
そう言ってコントローラーを放り出し、手も足も放り出して床に寝ころぶ希子。
いつの間にか懐かしいと思うようになった天井を見つめる。
「ねーちゃん、もうそろそろ父さんも母さんも寝てる時間だからさ、俺もビール吞んでもいい?」
上半身を起こした希子はテレビモニターを見ながらやめときなさいと言った。



