華と詩織に会ってから、懇切丁寧に接することがすべてではないと教わった。
「詩織さんはこのシリーズ読んでます?」
「あたし読んでないのよ~、活字読むのあんまり好きじゃなくて」
そう言ってケタケタと笑う詩織。
「家が自営業だってのもあるし、子供も二人いるから自分の時間とか全然使えないしね」
女の子に手を振ると恥ずかしそうにしながらも手を振り返してくれる。
「桜です。桜、ご挨拶しなさい」
詩織の背中から顔を出していた桜は横に座り、『さくらです、四年生です』と綺麗にお辞儀をしてくれた。
「ちょっとー、テーブルの上何でもいいから広げて!持っていくよ」
華がキッチンから運んできたのは結構な大きさの大皿だった。
そこには焼き立ての餃子が所狭しと並んでいる。時間は五時半。
「家族の分はまた後で焼くから熱いうちに食べちゃって」
時間帯が重なった時には晩御飯をごちそうしてもらうことが多かった。話を聞くのがうまく、様々な経験をしてきたらしい華にはとてもお世話になっている。
自分らしさが見つからないと相談した時には、
『二十歳そこそこで自分らしさが見つかるなら五年後には何かのプロでもやってるんじゃない?
楽しいと思ったことを楽しんで、別の楽しいことを見つけたらまたそれを楽しんで、らしさが何かはわからないけれど、常識さえ守っていれば誰かに迷惑をかけることでもないしね。
でも探しているなら今後も探して好きなことを広げていけばいいんじゃない?』
なんて言われて、自分の考えもあながち間違いではなかったのかもしれないなんて思わせてくれた。



