二十年以上生きてきたけれど、どの時代も人に流され続けた人生だなと考えると希子はふと恥ずかしくなる。

 自分らしさというものを持ち合わせていないお陰か、興味を持ったもの、教えてもらった事についての情報は少しずつ溜まっていった。

 今まで気になったことはすぐに調べて細かい内容や由来などを勉強する機会がもらえることになったからだ。

 自分の好きなことは何か、自分らしさとは何かを探してきた結果だったが、関わる人たちとの相槌を打ったり、それはこんな説があるらしいよ。
 なんて会話をするにつれてたとえ小さな情報だとしても人の役に立てることもあるのかもしれないと思い始めていた。

 そんな時、長く続くシリーズ作品をきっかけに地元の友達ができる。

「健太郎のここの台詞たまらないよね!」
「分かる!『……駄目だ』って、この一言の重みが違うよね!」

 希子より一回り以上年上だったが、そんなことを気にさせないくらい気さくに対話してくれる人だった。

 自宅にお邪魔させてもらう機会も増えてきたころ、ある日知らない女性と小さな女の子が先にリビングでくつろいでいた。

「こんにちは、初めまして。華さんのお友達の方ですか?」
 家主である加藤華は台所で本日の夕食の準備をしていた。

「近所に住んでる藤堂詩織ちゃん、適当に喋ってていいよ~」

 華の友人は華同様に気さくな人が多かった。詩織もまた希子よりは年上だったが、気さくさは華に負けていない。