その時々に見る本やゲームのストーリーで雨が好きになったり、山を散策したくなったりした。

 恋愛小説も読み進めていて、好きという感情を探したりもした。

 中体連が始まる少し前に、校門の裏口近くにあるテニスコートで練習をしているテニス部員を見かけることが多くなった。

 中でも圭一という男子生徒は別学年の女子からも人気のある男子生徒だった。

 その顔立ちは誰が見ても格好がいいと言われる整ったものだったが、おそらく大人の女性から見ると可愛らしい顔立ちだったのではないかと思う。

 中性的な、綺麗な顔立ちをも持ち合わせていた圭一だったが、毎日の部活練習でしっかりと日焼けをしていたところが男らしさを失わなかった秘訣だったのかもしれない。



 圭一君、カッコイイよね!学校の裏側を通る廊下を歩いているときは特にその言葉を聞いた。

 決して異性の友達が少なかったわけではなかったが、人を好きになると言う経験は未だしたことがなかった。

 そしてその時に決めたのだ。私の好きな人は圭一君にしようと。

 大人になってから思い返すとなんともいい加減だと思ったりもするが、自分の感情を探し求める中学生女子というのも可愛いものだ。

 圭一を選んだのもただみんなからの人気があるイケメンだったからではない。
 同じクラスの男子だったということが大きかった。

 あまり会話をしたことのないクラスメイトだったが、挨拶をしたり昼休みに声をかけたりする時のドキドキで好きな人に声をかける体験が出来ると思ったからだ。