「希子も二十歳か…」

 船橋孝臣は缶ビールをグラスに注ぎながら呟いた。

 船橋希子も同じように缶ビールをグラスに注いだ。
 今日は希子の誕生日で半年ぶりに実家に戻ってきた所だった。

 孝臣は軽くグラスを持ち上げると船橋京子は麦茶の入ったグラスを前に出した。

「俺も酒飲みてーな」

 愚痴を言いながらコーラの入ったグラスを差し出した船橋満を見て孝臣が小さくつぶやいた。

「誕生日おめでとう」

 『カキンッ』

 グラスと氷の揺れる音を立てて夕食が始まる。

 一口ゴクンとビールを呑み込む希子。
 キツめの炭酸の後でじんわりと舌に広がっていく苦味。後を追うように麦の風味が口の中から喉を通っていく。

 嫌いじゃないなと思いながらグラスを座卓に下ろす。

「きーちゃんおめでとう」

 京子から渡された誕生日プレゼントは四~五十センチ程の箱に入っているデスクワークに適したクッションだった。