さっきも、従者って言ってたけど、主?

「何を、言ってる」
「…記憶が無いのは些か不便ですな。ですがもう暫くの辛抱…、シオリ様」

ソルさんは再び私に手を差し出し

「こちらの世界に一度、いらして頂けませんか?」

こちらの世界…

「要は、違う次元から来たって事か」
「左様です」

悪意は感じない
家族にも一切それらしい意識を向けてない
得体の知れない奴、断ったら何をするか検討がつかない

「……戻ってこれるのか?」
「勿論です
 それに、どれだけ時間が経とうと
 私の力でこの世界では一瞬の事になります。ここに住う方々には気付かれません」
「…」

仕方ないな

「……分かった」

ソルさんは笑顔になり

「ありがとうございます」
「でも…」
「?」
「行く前に、着替えてきてもいいか?」

流石にこの格好はラフ過ぎる
汗もかいてるし…

「承知しました」