「さつきちゃん、お弁当なんて珍しいねー」

近くにいた別グループの女子がさつきの弁当を覗き込む。

「あ〜、今日は作ろうかなって気分だったの。」

答えつつも若干の動揺を見せた。

すると、

「はい、さつきの嘘つきー」

さつきグループの1人から声が上がった。

「千鶴ちゃんのお弁当を作るついでに自分のも作ったんだよねー」

と、もう1人がピンクの可愛いお弁当袋をどこからか引っ張り出してきた。

「ちょっ、返してよ!」

必死に止めようとするさつきだが、
そのお弁当はパスされ千鶴の机に。

「みんながお弁当分けちゃうから
渡すタイミング逃しちゃってモジモジしてたんだよねー、かわいーさつき」

そのイジりに反論すらせず
周囲からの笑いに顔を赤らめる。

「さつきちゃん、ありがとう。」

微笑みかけられたさつきは目線を逸らして、

「別に」、と一言。

こんな日がくる奇跡、
千鶴はお弁当と一緒に今を何度も噛み締める。