鶴の音返し

無言で人混みを押し避けて最前列へ。

一歩進むごとに頭の中で黒い風船が膨らんでいく。

「はーい、下がってくださーい。」

警察官越しに見えた担架で運ばれるのは、、、

「先輩!!!」

警察官の腕の隙間から彼の元へ駆け寄る。

「すみません、離れてください。」

救急隊員のことなんか目にも耳にも入っていない。

「先輩!!」

共に救急車へ乗り込もうとするが、
直前で静止される。

「すみません、ご家族以外は、、」

「彼の家族と連絡取れます!!」

頑なに乗ると主張する目に押し負けた隊員。

「乗ってください。」