鶴の音返し

「目を瞑ってみてください。
7つの音が聞こえるはずです。」

千鶴の言葉に従い、
視覚を絶って、
聴覚に全振りする。

・風が耳をかすめていく
・近くに川があるのか
・たくさんの大きな声、部活がんばってるな
・木が静かに揺れている
・虫が歌う
・ランニングしてる人が砂利を踏みしめていく

、、、
あと1つは?

隣に寝る千鶴に目で問いかけると、
その気配を感じたようで、
動くことなく答えてくれた。

「2時になれば最後の音が届きます。」

それ以上答える気がないのか、
音の世界に没頭する千鶴。

不思議と心地よい渡辺もそれに倣い、
虹音が完成するのを静かに待つ。