鶴の音返し

なにやらどんどん手続きが進み、
ようやく状況が飲み込めてきた。

さっき渡された長方形の大きな切符。

「いや、よく分かんねぇけど、乗らねぇよ?」

「高所恐怖症ですもんね。」

少しバカにした感じで言う。

「なんで?」

「お兄さんから聞きました。
あいつは高所恐怖症だから飛行機なんか絶対乗らねーぞって。」

「なら話が早ぇ。
その言葉通りだ。
じゃあな。」

「また逃げるんですか?」

「は?」

「手術からも逃げて、
私の話からも逃げて、
飛行機からも逃げて、

やってみなはどうしたんですか?

今の先輩ダサいです。」

「だから俺はそんなつもりで来てないんだよ。
兄貴に言われて、
ちょっとコンビニ行くくらいのつもりで来たから手ぶらだし!」

「やってみましょう!なんとかなりますよ!」

千鶴に押し切られ、
仕方なく地獄の入口ゲートへ向かう。

「なんで俺が。」

負け犬の遠吠えのごとく吐き捨てた言葉は、
飛行機の発進音にかき消された。