「こちらは秘書の安西さん」
専務は着物の女性に私を紹介した。
「安西さん、顔怖いんだけど」
専務が困った顔をしながら私を見た。
「あ、申し訳ありません」
私は無意識に専務を睨んでいたらしい。
慌てて着物の女性に視線をうつす。
「桜木専務の秘書をしております安西と申します」
一礼し改めて綺麗な着物の女性を見る。
目鼻立ちがハッキリした美人。スッと切長の瞳に同性の私にも色気を感じる。
「いらっしゃいませ。弟がお世話になっています」
着物の美人から出た言葉に戸惑う。
今、おとうと、って言いましたね?
弟!?
「安西さん、顔に出過ぎ」
横からプッと吹き出す声がしハッと我に変える。
私は目を大きく見開いてまじまじと着物の美人、専務のお姉さんを凝視してしまっていた。
「姉ちゃん、早く案内してよ。腹減った」
専務のお姉さんは「はいはい」とクスクス笑いながら個室に案内してくれた。
促されるままに座る。
「アレルギーはない?」
「ありません」
情報量が多すぎて、考えが纏まらない。
「あの、お姉さんて本当の?」
考えが纏まらなすぎて、失礼な質問をしてしまう。
「本当の」
専務はニヤリと意地悪く笑う。
「姉とその旦那さんのお店。今日、定休日だったんだけど昼行くからって伝えてあった」
「そう、ですか…」
最初からここに来るつもりだったのか。って。
「社長と来る予定だったのでは?」
私は今日の予定を思い出す。
「最初はね。でも安西さんの顔見たら、昼は安西さんと食べたいなって気が変わってね。
社長には秘書と打ち合わせするからって伝えてある」
専務は意味深な表情でこちらを見ている。
間違いない、バレてる。
あの日の女が私だって、バレてるというわけだ。
「そうですか」
なんて答えようか頭の中で考えるも気の利いた誤魔化しの言葉は浮かばない。
「もう立ち直った?」
専務の口から出たストレートすぎる言葉に思わず専務の顔を凝視した。
それが何を意味するかすぐにわかってしまう。
「はい…」
私は専務から視線を逸らし下を向いた。テーブルの木目を見つめた。
どうにかあの日の事を忘れてくれないだろうかということしか考えられなくなっていた。
専務はきっと意地の悪い笑顔を私に向けているに違いない。
「そんなに厳しい顔しないでよ。眉間に皺寄ってるよ」
誰のせいでっっっと心の中で思うも、誰のせいでもない。
専務はあの日、私が秘書だと知らなかったわけだし。
私も最低男が専務だとは知らなかった。
それに、私は最低男に最低なことをされたわけでもない。
むしろ、優しくしてもらったのだ。
(お酒をかけられた原因は専務だけど)
「その節はすみませんでした」
専務の顔は見ず、下を向いたままとりあえず謝罪の言葉を口にする。
「この話は終わりにしましょう」
「仕事とは関係のない事です」
本人に言う勇気はなく心の中でそう訴える。
専務は着物の女性に私を紹介した。
「安西さん、顔怖いんだけど」
専務が困った顔をしながら私を見た。
「あ、申し訳ありません」
私は無意識に専務を睨んでいたらしい。
慌てて着物の女性に視線をうつす。
「桜木専務の秘書をしております安西と申します」
一礼し改めて綺麗な着物の女性を見る。
目鼻立ちがハッキリした美人。スッと切長の瞳に同性の私にも色気を感じる。
「いらっしゃいませ。弟がお世話になっています」
着物の美人から出た言葉に戸惑う。
今、おとうと、って言いましたね?
弟!?
「安西さん、顔に出過ぎ」
横からプッと吹き出す声がしハッと我に変える。
私は目を大きく見開いてまじまじと着物の美人、専務のお姉さんを凝視してしまっていた。
「姉ちゃん、早く案内してよ。腹減った」
専務のお姉さんは「はいはい」とクスクス笑いながら個室に案内してくれた。
促されるままに座る。
「アレルギーはない?」
「ありません」
情報量が多すぎて、考えが纏まらない。
「あの、お姉さんて本当の?」
考えが纏まらなすぎて、失礼な質問をしてしまう。
「本当の」
専務はニヤリと意地悪く笑う。
「姉とその旦那さんのお店。今日、定休日だったんだけど昼行くからって伝えてあった」
「そう、ですか…」
最初からここに来るつもりだったのか。って。
「社長と来る予定だったのでは?」
私は今日の予定を思い出す。
「最初はね。でも安西さんの顔見たら、昼は安西さんと食べたいなって気が変わってね。
社長には秘書と打ち合わせするからって伝えてある」
専務は意味深な表情でこちらを見ている。
間違いない、バレてる。
あの日の女が私だって、バレてるというわけだ。
「そうですか」
なんて答えようか頭の中で考えるも気の利いた誤魔化しの言葉は浮かばない。
「もう立ち直った?」
専務の口から出たストレートすぎる言葉に思わず専務の顔を凝視した。
それが何を意味するかすぐにわかってしまう。
「はい…」
私は専務から視線を逸らし下を向いた。テーブルの木目を見つめた。
どうにかあの日の事を忘れてくれないだろうかということしか考えられなくなっていた。
専務はきっと意地の悪い笑顔を私に向けているに違いない。
「そんなに厳しい顔しないでよ。眉間に皺寄ってるよ」
誰のせいでっっっと心の中で思うも、誰のせいでもない。
専務はあの日、私が秘書だと知らなかったわけだし。
私も最低男が専務だとは知らなかった。
それに、私は最低男に最低なことをされたわけでもない。
むしろ、優しくしてもらったのだ。
(お酒をかけられた原因は専務だけど)
「その節はすみませんでした」
専務の顔は見ず、下を向いたままとりあえず謝罪の言葉を口にする。
「この話は終わりにしましょう」
「仕事とは関係のない事です」
本人に言う勇気はなく心の中でそう訴える。
