「失礼します」
一通りのスケジュールを伝え終わり最低男、もとい専務に一礼自分のデスクに戻った。
自分のデスクにある書類を纏めながら、専務は自分に気づいていないと確信する。
専務は私の話をパソコンに目を落としながら聞いていた。
所々必要事項の確認の際、目を見て話す事もあったが特に表情を変える事なかった。
このまま知らないふりをするのが無難。
あの日から1ヶ月たってるし、顔を覚えてるはずはないだろう。
「安西さん」
そう声をかけられたのはもう少しでお昼休憩に入ろうかという時間だった。
「はい。専務おかえりでしたか。気付かず申し訳ありません」
慌てて椅子から立ち上がり頭を下げた。
お昼は取引先の帰りに社長ととるという予定だったはず。頭の中で聞き漏らしがあったのかとフル回転させる。
「お昼食べながら打ち合わせしたいから外に出る準備して」
「お昼は社長とと伺ってありましたが」
専務を見上げ淡々と答える。
「ああ、予定変更。社長には話してあるから大丈夫」
専務は私を見下ろしながら事務的に話す。
「承知致しました」
目の前の専務の口角がほんの少し上がった気がした。
打ち合わせ、お昼を食べながら?
そんな緊急で打ち合わせなければならない事あったかな、などと考えても思いつかない。
「お待たせいたしました」
専務にそう告げると「ん」とうなづき私の前を歩き始めた。
「打ち合わせというのは何の件でしょうか?」
すぐ後ろを歩きながら専務に質問をする。
「お店についてから」
専務は前方を向いたまま答える。
「承知しました。どこのお店」
「いいから着いてきて」
私の言葉を遮り専務はやはり前方を向いたまま私に言った。
「…承知しました」
ドクっと心臓が音を立てる。
私は何かしただろうか?
今日は失礼なことをするほど顔を合わせていない。
すると、あの日のことか。
私の心はソワソワ落ち着かなくなってしまう。
この気持ちが顔に出ないように、ぎゅっと全身に力を入れる。
専務は会社から出て10分ほど歩いた場所にある和食のお店の前で立ち止まった。
会社から近いが来たことのないお店だ。
店の扉には定休日の看板がかけてある。
「専務、定休日になっていますが」
私は看板を見つめながら口を開いた。
「ああ、そうだね」
専務は軽い口調で答える。
「は?」
私は怪訝そうに専務を見上げる。そんな私をよそに専務は定休日のお店の扉を開いた。
「海斗、いらっしゃい」
定休日だと言っていたのに、中には綺麗な女性が着物姿で立っていて、こちらを笑顔で出迎えてくれた。
最低男はここで逢引き…私を使って世間の目を誤魔化そうと?
なんて瞬時に閃いてしまった。
最低男はやはり最低…
一通りのスケジュールを伝え終わり最低男、もとい専務に一礼自分のデスクに戻った。
自分のデスクにある書類を纏めながら、専務は自分に気づいていないと確信する。
専務は私の話をパソコンに目を落としながら聞いていた。
所々必要事項の確認の際、目を見て話す事もあったが特に表情を変える事なかった。
このまま知らないふりをするのが無難。
あの日から1ヶ月たってるし、顔を覚えてるはずはないだろう。
「安西さん」
そう声をかけられたのはもう少しでお昼休憩に入ろうかという時間だった。
「はい。専務おかえりでしたか。気付かず申し訳ありません」
慌てて椅子から立ち上がり頭を下げた。
お昼は取引先の帰りに社長ととるという予定だったはず。頭の中で聞き漏らしがあったのかとフル回転させる。
「お昼食べながら打ち合わせしたいから外に出る準備して」
「お昼は社長とと伺ってありましたが」
専務を見上げ淡々と答える。
「ああ、予定変更。社長には話してあるから大丈夫」
専務は私を見下ろしながら事務的に話す。
「承知致しました」
目の前の専務の口角がほんの少し上がった気がした。
打ち合わせ、お昼を食べながら?
そんな緊急で打ち合わせなければならない事あったかな、などと考えても思いつかない。
「お待たせいたしました」
専務にそう告げると「ん」とうなづき私の前を歩き始めた。
「打ち合わせというのは何の件でしょうか?」
すぐ後ろを歩きながら専務に質問をする。
「お店についてから」
専務は前方を向いたまま答える。
「承知しました。どこのお店」
「いいから着いてきて」
私の言葉を遮り専務はやはり前方を向いたまま私に言った。
「…承知しました」
ドクっと心臓が音を立てる。
私は何かしただろうか?
今日は失礼なことをするほど顔を合わせていない。
すると、あの日のことか。
私の心はソワソワ落ち着かなくなってしまう。
この気持ちが顔に出ないように、ぎゅっと全身に力を入れる。
専務は会社から出て10分ほど歩いた場所にある和食のお店の前で立ち止まった。
会社から近いが来たことのないお店だ。
店の扉には定休日の看板がかけてある。
「専務、定休日になっていますが」
私は看板を見つめながら口を開いた。
「ああ、そうだね」
専務は軽い口調で答える。
「は?」
私は怪訝そうに専務を見上げる。そんな私をよそに専務は定休日のお店の扉を開いた。
「海斗、いらっしゃい」
定休日だと言っていたのに、中には綺麗な女性が着物姿で立っていて、こちらを笑顔で出迎えてくれた。
最低男はここで逢引き…私を使って世間の目を誤魔化そうと?
なんて瞬時に閃いてしまった。
最低男はやはり最低…
