「遥、あのさ」
「なに?」
もうちょっとちゃんとやってくれないと綺麗にできないよ。
そう言おうとして、やめた。
正確にいうといえなかったというほうが正しいのかもしれない。
遥の目がちょっと怖かったのだ。
きっとそう見えただけ、気にしすぎなだけなんだとわかってるんだけど。
「ううん、なんでもない」
まだいっても出会って数時間だ。
名前と誕生日と出身校とちょっとした趣味と、まだありきたりなことしか知らないから。
「桃菜ちゃんってさ──────だよね」
中学のときに言われた言葉が耳に今でも残っていて、それを打ち消そうと頭を振った。



