あの夏、わたしはキミに恋をした。



「遥、あのさ」

「なに?」

もうちょっとちゃんとやってくれないと綺麗にできないよ。

そう言おうとして、やめた。

正確にいうといえなかったというほうが正しいのかもしれない。

遥の目がちょっと怖かったのだ。

きっとそう見えただけ、気にしすぎなだけなんだとわかってるんだけど。


「ううん、なんでもない」


まだいっても出会って数時間だ。

名前と誕生日と出身校とちょっとした趣味と、まだありきたりなことしか知らないから。



「桃菜ちゃんってさ──────だよね」

中学のときに言われた言葉が耳に今でも残っていて、それを打ち消そうと頭を振った。